リーマン予想2

前回は、1より大きな実数変数sに対して\zeta(s)を定義し、それが、自然数全部を使っても、素数全部を使っても表すことができることを見ました。
今回は、変数sに1より実数以外の数を入れたときにどうなるか見てみましょう。
例えば、境界のs=1


(1)\hspace{20}\Large \zeta(1)=1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\frac{1}{4}+\frac{1}{5}+\frac{1}{6}+\cdots


\frac{1}{x}積分\log xであることを知っていると、右辺が発散することを示せます。こんな感じ。

式(1)の右辺は高さ\frac{1}{n}、幅1の長方形の面積を足し合わせたもの。これは\frac{1}{x+1}とx軸で挟まれた領域の面積より大きいです。だから、


[tex:(2)\hspace{20}\Large \zeta(1)>\int_{0}^{\infty}{\frac{1}{x+1}dx}=[\log(x+1)]_{0}^{\infty}=\infty


さて、\zeta(s)とはちょっと違う無限級数を考えましょう。


(3)\hspace{20}\Large G(s)=1+s+s^2+s^3+s^4+\cdots


G(s)は初項が1、公比がsの等比数列の和です。公比が1よりも小さいときにはこの無限級数は収束します。公比が1以上のときには足していく数が大きくなっていくので、発散してしまいます。ですから、ここではsは1より小さいとします。この前提で、等比級数の公式を導いてみましょう。(3)の両辺にsを掛けます。


(4)\hspace{20}\Large sG(s)=s+s^2+s^3+s^4+s^5+\cdots


(3)から(4)を引くと、


(5)\hspace{20}\Large G(s)-sG(s)=1


従って、


(6)\hspace{20}\Large G(s)=\frac{1}{1-s}


です。無限級数だったものが、引き算と割り算だけの簡単な式になりました。この新しいG(s)s=1の時には発散しますが、1より大きな値を入れても、何の問題もなく計算できます。例えば、G(2)=-1ですね。
式(3)ではG(2)は発散してしまいます。ところが式(6)のG(s)では、発散して計算できなかったところも計算できるようになっている。もちろん、式(3)で計算できるところでは、式(6)も同じ値になります。こうして見ると、等比級数の公式が公式以上のものに見えてきますね。
リーマン予想1では最初の式(1)の級数や積を「Riemannのゼータ\zeta函数の元となるもの」と呼びました。今回の式(3)に対する式(6)のように、最初の式(1)に対する何か、それがゼータ函数です。


今日はここまでです。今日、式(3)から式(6)を導いたように、明日からゼータ函数探しをします。