リーマン予想1

Twitterで、奈良女子大学の「カフェマテマチカ」という活動を知りました。本年度最後の催しは「素数とリーマンゼータ関数」とのことで、思わず申し込んでしまいました。当日まで1ヶ月以上あるので、その間、予習しとこうということで。
テキストは、Riemannの原論文。(敬称省略します。)
http://www.h3.dion.ne.jp/~y.ich/mathematics/Riemann.pdf
この論文の日付は1859年11月です。Riemann33歳。7年後40の声を聞かず短い生涯を終えます。日本では安政の大獄が吹き荒れ、イギリスでは「種の起原」が出版されました。
Riemannは、論文をEuler積からスタートしています。


(1)\hspace{20}\Large \prod{\frac{1}{1-\frac{1}{p^s}}}=\sum{\frac{1}{n^s}}


sは1より大きな実数変数です。左辺は、Πの後の式について、pに素数を入れたものをすべて掛け合わせます。右辺は、Σの後の式について、nに自然数を入れたものをすべて足し合わせます。
ΠとかΣとか慣れないと威圧感がありますよね。なんだかとっても難しいから記号に置き換えたみたいな。以下の式と同じです。


(2)\hspace{20}\Large (\frac{1}{1-\frac{1}{2^s}})(\frac{1}{1-\frac{1}{3^s}})(\frac{1}{1-\frac{1}{5^s}})\cdots=\frac{1}{1^s}+\frac{1}{2^s}+\frac{1}{3^s}+\cdots


自然数全部を使ったある式(右辺)が、素数全部を使ったある式(右辺)と等しいという式です。不思議な式ですね。
この、sを変数とする両辺の式が、Riemannのゼータ\zeta函数の元となるものです。実際、sが1より大きな実数の時には上の式に一致しますので、これを\zeta(s)とします。
ところで、不思議な式(2)は以下のように導くことができます。(「素数に憑かれた人たち」)


(3)\hspace{20}\Large \zeta(s)=1+\frac{1}{2^s}+\frac{1}{3^s}+\frac{1}{4^s}+\frac{1}{5^s}+\frac{1}{6^s}+\frac{1}{6^s}+\frac{1}{8^s}+\frac{1}{9^s}+\frac{1}{10^s}+\frac{1}{11^s}+\cdots


両辺に\frac{1}{2^s}を掛けます。


(4)\hspace{20}\Large \frac{1}{2^s}\zeta(s)=\frac{1}{2^s}+\frac{1}{4^s}+\frac{1}{6^s}+\frac{1}{8^s}+\frac{1}{10^s}+\frac{1}{12^s}+\frac{1}{16^s}+\frac{1}{18^s}+\cdots


式(3)から式(4)を引いてみます。


(5)\hspace{20}\Large (1-\frac{1}{2^s})\zeta(s)=1+\frac{1}{3^s}+\frac{1}{5^s}+\frac{1}{7^s}+\frac{1}{9^s}+\frac{1}{11^s}+\frac{1}{13^s}+\frac{1}{15^s}+\frac{1}{17^s}+\cdots


両辺に\frac{1}{3^s}を掛けます。

(6)\hspace{20}\Large \frac{1}{3^s}(1-\frac{1}{2^s})\zeta(s)=\frac{1}{3^s}+\frac{1}{9^s}+\frac{1}{15^s}+\frac{1}{21^s}+\frac{1}{27^s}+\frac{1}{33^s}+\frac{1}{39^s}+\frac{1}{45^s}+\frac{1}{51}+\cdots


式(5)から式(6)を引いてみます。


(7)\hspace{20}\Large (1-\frac{1}{3^s})(1-\frac{1}{2^s})\zeta(s)=1+\frac{1}{5^s}+\frac{1}{7^s}+\frac{1}{11^s}+\frac{1}{13^s}+\frac{1}{17^s}+\frac{1}{19^s}+\frac{1}{23^s}+\cdots

「エラトステネスのふるいとの類似に気づいただろう。ただし違いにも目を向けるべきだろう。元のふるいを扱うときには、それぞれ素数になる最初の数を除いて2倍、3倍、4倍、……を消していった。今回は、元になる素数を、その倍数とともに、右辺から引き算で消している。」(「素数に憑かれた人たち」より)


\zeta(s)の初項の1以外の項が消えていきます。ということはこれを永遠に繰り返すと、初項1だけが残る。


(8)\hspace{20}\Large \cdots(1-\frac{1}{13^s})(1-\frac{1}{11^s})(1-\frac{1}{7^s})(1-\frac{1}{5^s})(1-\frac{1}{3^s})(1-\frac{1}{2^s})\zeta(s)=1


\zeta(s)の前の因子(係数のこと)で両辺を割ると、


(9)\hspace{20}\Large \zeta(s)=\frac{1}{1-\frac{1}{2^s}}\times\frac{1}{1-\frac{1}{3^s}}\times\frac{1}{1-\frac{1}{5^s}}\times\frac{1}{1-\frac{1}{7^s}}\times\frac{1}{1-\frac{1}{11^s}}\times\frac{1}{1-\frac{1}{13^s}}\times\cdots


式(3)と式(9)から式(1)が導かれます。


今日はここまでです。さて、果たしてringさんのように毎日続けられるでしょうか?