オンリーワン

私が勤める会社はオンリーワン戦略を掲げて好調に業績を伸ばし、世間でもいわゆる現在の勝ち組に入れていただいている企業です。量産数が多ければ多いほどコストの面で有利になるハードウエアの市場原理と、アイデア1つで他社が追従する前に圧倒的シェアを確保できるソフトウエア/サービスの市場原理の世界では、巨大企業とベンチャ企業が有利と言えるかと思いますが、その中で今の規模の会社が成長しているというのは経営陣の能力の高さが伺えます。
ただ、オンリーワンを強く意識することは、社会的に模範となる精神を目指すとき、果たして健全なのかどうか。時々ふとそう思うときがあったのですが、ダライ・ラマ14世さんの「こころの育て方」を読み返していて、ああこれだったかと得心しました。

みなさんのような人たちとお会いする時、私は常に、私と同じ一人の人と会うのだと考えるようにしています。そうすると、他の人と上手に交流できるのです。もし私たちが、例えば私がチベット人であり仏教徒であるというような、おたがいの特徴の違いにこだわると、そこには差異が生まれます。だが、そのようなことは二義的なことです。違いにこだわることがなければ、私たちは上手に交流できるし、考え方を交換できるし、異なる経験を理解し合えるのです。

開発の際には、常に「他社との違いはなんだ」と問われるのですが(それは事業化のため必須の問いなのですが)、その問いには先人の努力と工夫に対する敬意の気持ちが見えません。食うか食われるかのシェア争いしているときに敬意もクソもないと言われたら身もふたもないのですが、今の世の中の不満の多くは、勝ち組が必ずしも人格的に尊敬できないところに問題があって、単に格差が開いたことだけではないと思います。
ただ、先人の努力と工夫に対する敬意の気持ちを持つには、今の特許制度を見直さないといけないのは確かです。敬意以上にお金をとられては敬意の持ちようがない。

ダライ・ラマ こころの育て方

ダライ・ラマ こころの育て方