名局

moto54reという方が日本の碁の名勝負・名場面を紹介されていました。
http://moto54reactive2.blogspot.com/2010/12/blog-post_22.html
とても懐かしい。
私が一局選ぶなら迷わず、1992年の本因坊七番勝負の趙治勲(黒)ー小林光一戦第4局です。
趙治勲さん、出だしから3連敗で迎えたカド番の一戦。小林光一さんは棋聖・名人・本因坊をすべて保持する大三冠へリーチです。

白が右下三三に入るのが早過ぎという。確かにそんな感じですが、それを咎められるのは神様だけでしょうという気もします。
白はタイミングよく、下辺の星にカタツキ。白54の外回りに回って、黒のモヨウが無くなれば、三隅上辺の地がモノを言います。
観戦者の心配をよそに、黒は左下隅の白を根こそぎ攻めます。厚く外回りを取ったつもりが一眼もなく、真っ黒の右辺に踏み込めない白は62と眼形を少しでも増やします。

黒、利かせるところはすべて利かせて、75と白を分断に行きました。
白88ケイマの突き出しにオサエられず、黒89とタケフにつなぎますが、これで黒がいいという確信(これは大局観なのか読みなのか私にはわかりません)が勝敗のすべてだったという解説でした。
白出たら中央の白にツケるのでしょうか?確かに白中央取られるか、黒に手数を伸ばされて左隅がひどい目に会いそうです。
で、白は弱い石から攻めるふりで白90。

左辺の黒の手数を伸ばして、左下隅への手入れを強要し、中央の白をいじめながら右辺の地模様を固めて、まだ薄い上辺に打ち込んで勝利宣言。


前例のない布石とか、難解な攻め合いとか、大きなフリカワリとか、一手で決める妙手とかはなく、まるで、孫悟空を掌の上であしらう釈迦のように、当時の棋聖・名人をいなした印象を持ちました。負けたら失冠というカド番で。
この碁が名局なのかそもそも序盤の白に問題があったのか、今の評価を伺いたいですが、少なくとも長い持ち時間でないと作れない棋譜だと思います。