冒険心

朝食がてらインターネットカフェへ出発したところ、一見して痴呆の毛のありそうなおばあさんが自転車に乗ったおっちゃんに道を聞いていました。二人とも困った顔をしていたところ、おばあさんは今度は私に
「○○薬局って薬局へ行って薬を飲まないと行けないんだけれど道がわからなくて」
「○○薬局?どっかで見たことあるような。(地理的記憶は10年も前からかなり怪しくなった。)XX街道沿いですね」
「連れて行ってもらえませんか」
(薬局はすぐ見つかっても、これはきっと一日がかりの冒険が始まるに違いない。わくわく。)
「ええ一緒に行きましょう。」
おっちゃんは他の相手が見つかってほっとした様子。
大きな字で飲む時間を書いたメモと薬を持ってちょこちょことゆっくり歩きながら、
「お薬飲まなきゃいけないんだけど、子供が朝から冷たくてそれで外へ出たら道がわからんようになって。私もぼけているし…」
(うんうん)
「XX街道出ましょうか?」
「そっちよりこっちの方が近道だから」
(どうやらおばあちゃん、表通りは車で危ないことをよくわかっている様子)
畑仕事に来たおじいちゃんが居たので、○○薬局の場所を聞いたら、確かに向かっている方向にあったのですが、おばあちゃん、突然、おじいちゃんに
「乗せてってくれへんかなー」
と交渉。(おおー、やっぱり世の中男より女の人のほうがたくましい。)
どうやらおじいちゃん、おばあちゃんをご存知の雰囲気で、
「こいつは農薬載せてるから乗せられへん」
せっかくの冒険がこれで終わってはと、
「まあおばあちゃん、近くだから歩いていきましょう。」
と促して歩き始めたら、向かいから自転車に乗った女の人が来て
「おばあちゃん、どこ行ってたの?みんな探してるで。さあ帰ろ」
「この人に親切にしてもうて。お名前だけでも、お名前だけでも」
笑顔で手を振って短い冒険が終わりました。この街は、ちょっとばかしぼけちゃっても周りがうまく保護している街のようです。
代わりにインターネットカフェで仮想「冒険」しました。

三四郎や志乃がなんでこんな変な顔してるんだと思って、2はフォローしてなかったのですが、改めて最後まで読んだら「[asin:B00006LNPZ:title]」と同じ気持ちがいい話でした。小林まことさんのテーマを一言で言ってしまうと「コンプレックスを超える強さ」でしょうか。コンプレックスがあると優しさを売って強さを手に入れるところがありますが、バカになれば優しさと強さを両立できることを教えてくれます。