盾・シールド

シールド(盾)

シールド(盾)

を読みました。誰でも傷つきやすい心を守る盾を持っているというお話です。意外とこのお話を素直に読める人は少ない気がして、普段気を使って生きている人が、人間社会をふと冷静に見るのにとてもいい作品だと思いました。
村上龍さんがインタビューに答えて、サッカーの中田秀寿さんとのやり取りが作品を作る上でのアイデアを生んだと話しています。彼は普段とてもナイーブな心の持ち主ですが、戦うべき時には無類の強さを発揮する、それは彼が強いシールドを持っているからだ、強いシールドを持つ人間ほど柔らかい心を維持することができるということでした。
作品とは裏腹に、ここには作者の限定された価値観がありました。
物語のコジマとキジマ、私にはどちらがよい人生を歩んだのか全く判断できませんでした。ただ、違った人生を送った二人が最後に話し合う機会を持てたことが素晴らしい。
傷つきやすい心を守る強いシールドを持つことがそれほど立派なことには思えません。それでは、単に「大人になれ」というありきたりなメッセージにしかならないのでは?それとも、今の大人は傷つくことのない枯れた心の持ち主だという話だったのでしょうか。