近代化されながらも車よりも人が優先される生命力みなぎる異国。私は相棒と新型メルセデスに載っていた。運転席に載っていたが、運転は相棒に任せていた。パートナーはゲームコントローラで車を操作している。なぜかヘッドライトのオンオフだけはコントローラでできないらしく、私はものうげにライトを点けた。浮かび上がる群衆。
群衆に囲まれた豪華なショッピングビルに載り付け、盛り場に向かおうとすると、ボディガード風の鋭い目つきの男たちに囲まれた。道を塞がれ、目は地下への業務用スロープを降りろと言っている。
相棒と目を合わせると、男たちの一人に愛想のいい笑顔を向け、男たちを押しのけ二手に分かれて逃走。
群衆をかき分け、地下のモールに向かって、階段を飛ぶように駆け下る。バツ悪くガラスの扉はどこも閉じかけている。私は「仕方ねえか」とつぶやきながら鏡の仕切りに飛び込んだ。
衝撃もなく、私が飛び込んだ世界は水の中。雑踏の音はなくなり、男たちが別世界でスローモーションのように私を追い抜いて行く。
静寂の中には、こじんまりしたホテルのロビーが。
受付の女性に
 「ここは?」
と聞くと、
 「私も渡って来たばかりでわかりません。支配人を呼びますね」
どこからともなく、いかりや長介そっくりの支配人がやってきたので、
 「どうして水の中なのに苦しくないのですか?」
 「あなた方はそうやって何でも理屈で考える。そんな考え方ではこの世界はやっていけませんよ、イェ〜メン」
私は、この理屈のない世界を無感情に眺め直した。


ここで目が覚めました。「イェ〜メン」が衝撃的。