善の研究
- 作者: 西田幾多郎
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1979/10
- メディア: 文庫
- 購入: 4人 クリック: 192回
- この商品を含むブログ (62件) を見る
改めてパラパラとめくってみて、最後の章が「知と愛」だったとは知りませんでした。過去に何度か開いていたはずですが、ここまでたどり着かなかったのでしょう。知と愛とは、主客合一という同じ精神作用であり、対象を非人格的か人格的か便宜的に区別すると生まれる差だけ。
而して…宇宙実在の本体は人格的の者であるとすると、愛は実在の本体を捕捉する力である。ものの最も深き知識である。分析推論の知識は物の表面的知識であって実在その者を捕捉することはできぬ。我々はただ愛に由りてのみこれに達することができる。愛は知の極点である。
このまどろっこさ(笑)(失礼、西田先生)。41歳の西田先生には、宇宙が愛の対象となりうることは仮定であって、演繹するには至らなかったようです。これが哲学と宗教の境界でしょうか。
つくづく、この種の思想、哲学は、超越数を有理数列で近似するような作業だと思いました。でも、近似が成立するという感覚が、知り得ないものの存在の知覚そのものになります。