相互作用する質量ゼロ、スピン2の粒子は一般相対論の重力場の方程式で古典近似される

2012年7月に書き捨てた下書き、読み直したらそれなりに面白かったので公開します。


ブログのタイトルは、超弦理論の解説などでよく見かける命題です。超弦理論は相互作用する質量ゼロ、スピン2の粒子を含むから重力場を含むという文脈です。以下の書籍で元の命題はFeynmanさんの講義ノートで有名になったことを知りました。

ファインマンさんの流儀―すべてを自分で創り出した天才の物理学人生

ファインマンさんの流儀―すべてを自分で創り出した天才の物理学人生


この本、よかったです。学生時代にわくわくしながら聞きかじった理論が産み出される瞬間が生き生きと描かれています。やっぱり私にとってFeynmanさんは特別です。(そういう割に論文一本も読んだことがありませんけど…)


Feynmanさんの講義ノートは、出版され、インターネット上でコピーも出回っています。

Feynman Lectures On Gravitation (Frontiers in Physics)

Feynman Lectures On Gravitation (Frontiers in Physics)

日本語訳も出版されていますね。
ファインマン講義重力の理論

ファインマン講義重力の理論

この講義は有名な「ファインマン物理学」の講義と平行して行われたそうで、このころFeynmanさんは強烈な情熱で教育に力を注がれたようです。

原書を通して読むのは大変なので日本語訳が入手できるといいのですが、最近は貧乏性で?紙の書籍を買わなくなりました。

知ったことをメモすると、

  1. Feynmanの前にも先人は何人がいた。Feynmannの後にWeinbergが洗練された仕事をしたとのこと。
  2. Weinbergは、「重力子同士の散乱振幅の解析的特性についての非常に合理的な仮定から、相互作用する質量ゼロ、スピン2の粒子は、普遍的な強度で(自身を含む)物質と作用する場合だけLorentz不変であることが可能である」ことを示した。

Weinbergの議論は以下の通り

  1. 量子論に従えば、粒子の固有角運動量(スピン)は整数か半整数。0, 1/2, 1, 3/2, 2, ...
  2. 質量0のスピン0以外の粒子のスピン状態は、特殊相対論(Lorentz不変性)に従うとスピンの大きさに関わらず2状態。
  3. これにより、質量0のスピン0以外の粒子の場(の演算子)はLorentz不変とならない。変換すると時空微分演算子に比例する項が発生する。
  4. 物理法則がLorentz不変であると要請すると、上記場の方程式(もしくはLagrangian)は時空微分演算子に比例する項を相殺するような形でなければならない。もっと強く要請すると、場から時空微分演算子に比例する項を引いた共変成分で構成したLagrangianはLorentz不変である。
  5. 場から最も簡単な共変な場を構成すると、スピン1の場合、電磁場、スピン2の場の場合、Riemannテンソルとなる。
  6. 以上のように、フラットなMinkovski空間上で、電磁気学、一般相対論が構成できる。

スピン1について

  1. 輻射光子の運動量が非常に小さい極限においては、散乱振幅はプロパゲータのみが寄与(発散)する。このことから相互作用は物質粒子のスピンに依存しないパラメータ(電荷)に依存することがわかる。
  2. 上記から電荷は保存することがわかる。

スピン2について

  1. 同様の議論で、すべての粒子は同じ結合定数を持つことがわかる。