観る碁のための囲碁入門7

第4譜(再掲)


黒11は「ブツカリ」と呼ばれるごつい手です。一手だけ見てましょう。



黒11と打つと白Aはほぼ絶対です。なぜか?



仮に白が他の場所に打つと黒はすかさず13と白を一方的に分断します。白のAとBがとても心細く見えませんか?
観る碁のための囲碁入門3で説明した「取り上げられない石」の形を思い出してください。取り上げられない石になるためには連絡した仲間が必要です。
白のAとBは仲間になれない形になりました。なのでA,Bは取られないようになるためには別々に仲間を作る必要があります。効率が悪いのです。
白12も陣地っぽいところを広げた大きな手ですが、前に打ったA,Bの効率が悪くなると黒がリードということになります。



なので実戦白12と打ちました。この瞬間のくっついた石の周りをしっかり見てください。黒の周り空いているところは3箇所、白の周り空いているところは4箇所、黒の方が少ないです。つまり黒の方が取られやすくなっている。囲碁は取られない石をたくさん作るのが目的のゲームですから、こういう手は比較的珍しいです。



もしかしたらそろそろ黒13は自然な手に見えてきませんか?
黒17まで定石の一つができました。黒17に注目してください。白Aと打つと次に黒が取る手があります。なので白はAに打っても損するだけ。Aはルール上白が打てない場所ではないですが、白が打ちにくい場所があるので黒の一群は取られにくい石の形になったと言えます。



黒17を一つずらして打った時と形を比べて、どちらが効率がいいか感じ取ってください。


もう一度第4譜を見直してみましょう。



黒11は自分の方が取られやすくなる比較的珍しい手と説明しました。隅だけを見ると白の陣地が多い。ところが左下隅の黒石と黒A,Bの連携を感じ取ってください。下辺一体に黒石の多い場所ができました。
以前に相手の石の多い場所に入っていくとあまり効率良く打てないという話をしました。
下辺はまだ黒の陣地とは言えませんが、白が入りにくくなっています。


下辺を白から入りにくくるというのが黒11を打った時の黒の構想、作戦だったのです。