観る碁のための囲碁入門6

第3譜


白10と置きました。この手は今までの手と全く意味が違う手です。相手の石にいきなりくっつけて置く手をツケと呼びます。

他のゲームもそうかもしれませんが、囲碁はゲームを通して、言葉なしに会話が交わせると言われます。そういう意味を込めて、囲碁には「手談」という別名もあります。
その一方で、「ツケ」のように囲碁には盤がなくても言葉でゲームを語れるように特別な用語がたくさん用意されています。囲碁用語で最初の不思議な言葉は、自分の番で石を置くことを「打つ」ということです。「いい手打たれた」とか。石を置いているのに、なんで打つっていうんでしょうね?一度置いたら動かせないという意味なのでしょうか?

ルールを思い出してください。相手の石の四方を囲んだら相手の石を取り上げます。つまりツケは「あなたのその石を取るよ」と言っていることです。
ところが、よく見てください。



相手の石にツケると、実は自分の石も四方が自ら囲まれやすくなっていますよね。相手の石はあと3つ囲むと取れますが、自分の石もあと3つ囲まれると取られます。しかも次は相手の番。
囲碁には「取ろう取ろうは取られのもと」という格言があります^^
ではこれに黒はどう応えるのでしょうか?白の意図はどういうところにあるのでしょうか?続きを見てみましょう。

第4譜

お互いに主張した結果として、白は盤の左下の方を陣地にして、黒は盤の下の方に黒石の多い場所を作りました。広いですが、陣地と呼ぶにはまだちょっとスカスカしてますね。
この手順よく打たれます。よく打たれる手順を定石と呼びます。

将棋を指される方はおなじ「じょうせき」でも定跡という漢字を浮かべられるかと思います。将棋の定跡は盤全体の手順ですね。囲碁の定石は盤の一部、部分的な手順を示します。

ここでちょっと第3譜に戻りましょう。白はツケましたが、それ以外の定石もあります。



実戦のツケはCですが、その他にAからIまでそれぞれに定石があります。それ以外の手は悪いかいうと効率が悪くなる場所もありますが全部がそういうわけでもない。まだよく研究されていない場所も残っていると思います。それに定石の手を打っても途中で定石から離れることもある。

白はCにツケる前、それぞれの定石や定石以外の手を打ってみるとその後、盤全体の他の石とどういう関係になるか想像して着手を決めます。


白の選択肢がたくさんあることを示しましたが、そもそも黒が実戦の9と打った時も色々な選択肢の中から選んでいます。何か途方にくれますよね^^;
定石にはそれぞれ方針があります。序盤に石が接近した時に着手を決めるには、方針を決めて方針にあった定石を選ぶのが一つの考え方です。なので、本当は定石を色々知っておくと対局観戦が楽しめます。でも大丈夫。囲碁は何も知らなくてもこちらが広そうとかいう感覚が意外と正しいものです。自分の感覚を信じてプロの対局を楽しんでください。